2015/02/05

【読みもの】 それ、「生まれたて」です。


 
生命の誕生、それは何と神秘的で感動的な瞬間でありましょうか。
 
私たち人間はもちろんのこと、生きとし生けるものすべてには誕生の瞬間があります。
そして誕生した生命には「生まれたて」である瞬間もまた、あるのです。




 ◇「生まれたて」とは?



「ボトッ」という鈍い音とともにこの世に産み落とされた生命は、まず地面に叩きつけられます。

世の中の洗礼を受けるのです。





しかしその生命はすぐ、重力に逆らいながら、懸命に立とうとします。

  この「懸命に立とうとする瞬間」を「生まれたて」と呼ぶのです。





「生まれたて」はベトベトしています。決してきれいなものではありません。むしろ汚いです。
 
しかし生命の輝きに満ちています。

 
「生まれたては」はまだうまく立てません。プルプルしながら立とうとします。一生懸命です。
 
だから「生まれたて」はみんなに応援されます。
応援したくなる、応援せずにはいられなくなるものなのです。
 
 


この「生まれたて図鑑」では、そんな「生まれたて」の魅力に迫り、日常に潜むさまざまな「生まれたて」を紹介していきたいと思います。
 



 
◇「生まれたて」図鑑
 
 
 

 
高所にある物を取るときに便利な「生まれたて」。
脚「立」とは言えど、まだうまく立たない。
その上に乗ろうものなら
周囲から顰蹙(ひんしゅく)を買うだろう。

 
 
 
 
 
 
 
 
見ていた人が「立った!」と歓喜する「生まれたて」。
本来は50話目にしてようやく訪れるシーンであるため、
まだ感動するためのエピソードが足りない。
車いすも「生まれたて」なので、立っているのがやっと。
 
 
 
 
 
 
 
絶えずおしっこを飛ばす小僧像の「生まれたて」。
まだうまく立てないため、台から落ちそうになる。
小便の軌道もかなり不安定で、
出たり出なかったり飛ばなかったり途切れたりする。
 
 
 
 
 
 
 
力自慢の筋肉質な「生まれたて」。
三角筋や大胸筋はすでにムキムキだが、
まだうまく立てないため、静止するのもままならない。
いつ崩れるか分からないので、近づくのは危険。
 
 
 
 
 
 
 
出てくると嬉しい「生まれたて」。
まだうまく下方に落ちられないため、
積み上げたブロックの上に乗っかってしまうことも。
「4段消し」を達成するのはまだ先になりそう。
 
 
 
 
 
 
 
 100歳の「生まれたて」。
まだうまく立てないが、生まれながらに高齢なので
これ以上の成長を期待するのは酷だろう。
優しく労わるべき存在。
 
 
 
 
 
 
 
 
信仰者から崇拝される「生まれたて」。
まだうまく空中に浮かぶことができないため、
創唱者としてのカリスマ性は不十分。
色々と「信じてあげる」ところから始めたい。
 
 
 
 
 
 
 
木製バットに多数の釘が打ち込まれた「生まれたて」。
打撲のみならず刺傷や裂傷を負わせることが
期待されているが、まだうまく釘が立たないため、
中軽度の打撲しか望めそうにない。
 
 
 
 
 
 
 
ピラミッド状にグラスが積み上げられた「生まれたて」。
まだそれぞれのグラスがうまく立たないため、
タワーの形状を維持するのがやっと。
ビシャビシャなのがシャンパンによるものなのかも判らない。
 
 
 
 
 
 
 
日本語の歴史を感じさせる「生まれたて」。
「わ行」の「え段」に位置付けられ、発音は「え」と同じ。
決して「る」の下に「m」が生えているわけではないのだが、
まだうまく立てないため、M字開脚しているかのよう
 
 
 
 
 
 
 
双子の兄弟による空中絶技の「生まれたて」。
「トランポリンの要領で高く飛び上がる」という理屈だが、
足がおぼつかないため、まだうまく飛べない。
あらかじめゴールバーの上に乗らずとも打ち破れる。
 
 
 
 
 
 
 
 実力差のある相手に執拗な攻撃を受けた「生まれたて」。
「生まれたて」のうえ、
「左足が変な形に曲がっている」ためうまく立てない。
しかしながら「かませ犬」としてはすでに一流。
 

 
 
 
 
 
 
 
切れ目を入れて温めたコンニャクの「生まれたて」。
人肌の温かさに加え、プルプル震動とベトベト潤滑による
「実用性」は本来のそれより高いかもしれない。
使用後は捨てずに、よく洗っておでんや煮物にしたい。
 
 
 
 
 
 
 
猿人、原人、旧人、新人と進化してきた「生まれたて」。
「生命の神秘」と「人類の進化」を
一石二鳥で私たちに教えてくれようとしている。
しかし歩行はおろか立つこともままならないため、
「次の時代に進んでいる」感は薄い。
 
 
 
 
 
 
 
 
世界中の人たちが仲良く手を取り合っている「生まれたて」。
それぞれがまだうまく立てなくとも、
人種も国境も思想も宗教も超えて
わたしたち人間がお互いを尊重し
「一つになろう」と願うことで、
「平和」は生まれる。
そして生まれたばかりの「平和」を
共に育て、成熟させていくことが
この世界に生まれた、わたしたち一人一人の使命なのだ。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「生まれたて」図鑑は、以上です。
 
 
 
 
生命の神秘バンザイ!
 
 
(終)